型付けがなぜ必要?
ミットおよびグローブ(グラブ)の型付け次第で、あなたのプレーは大きく変わってきます。どんなに高級なファーストミットを買っても型付けを失敗すると、本当にボールが捕りにくいミットになってしまいます。
特にファーストというポジションは内野手からの送球を捕球することが一番の仕事です。
それと同時にショートバウンドやハーフバウンド送球を捕球することがファーストの一番の見せ場です。
そのためファーストが使うファーストミットは、他のポジションのグラブよりも大きめに設計されており、ショートバウンド、ハーフバウンドが捕りやすいというメリットがあります。
しかし、その大きさから重く扱いにくいというデメリットも持ち合わせており、メリットを生かせないということも少なくありません。
特に内野手で小さいグラブを使ってきた人にはとても扱いにくいと思います。
しかし、そのファーストミットもしっかりとした型が付いていればショートバウンド、ハーフバウンドが捕球しやすいというファーストミットのメリットを享受することができます。
ファーストミットの型
ファーストミットには①シングルブレイクと②ダブルブレイクという2種類の型があります。
①シングルブレイク
シングルブレイクは、写真のようにミットの小指の付け根を中心に捻るように捕球する型です。「捻り捕り」と呼ばれることもあります。グラブを小指二本入れで使用しない人に良くみられる型です。日本ではピッチャー、サード、セカンド、ショートを守る選手のほとんどが小指二本入れをしていないので、これらのポジションを出身の選手にはシングルブレイクが向いているかもしれません。また、アメリカンスタイルのファーストミットなどは、小指二本入れではなくシングルブレイクの方が捕球しやすいかもしれません。
②ダブルブレイク
ダブルブレイクは、写真のように親指と小指の付け根の2箇所に折り目をつけてボールを包み込むように捕球する型です。ボックス型と呼ばれることもあります。小指二本入れに慣れている選手にオススメの型で、私はいつもダブルブレイクの型をつけています。理由は、ダブルブレイクの型を付けたミットは捕球面を大きく使うことができ、複数のポケット(捕球の位置)を作ることができるので、ショートバウンドやハーフバウンドなどの不規則な送球の捕球に長けているからです。
グラブバイブルを著者であるグラブ博士の梅原氏も型の名称は違うものの、このダブルブレイクを推奨しており、メリットとしてピンセット捕り(ミットの先でボールを掴むことができる)ができることをあげています。
どちらの型をつけるかは、あくまで個人の好みの問題ですが、オススメはダブルブレイクです。
型付けの方法
ここまでは、ファーストミットの型について紹介してきましたが、ここからは具体的な型付けの方法についてです。
ミットの型付けといっても方法は様々です。
代表的なものとしては久保田運動具店(久保田スラッガー)福岡支店長である江頭重利氏が考案したグラブをお湯につけて型を付ける湯もみ型付け、グラブをスチーマーに入れて型付けをするスチーム型付け(加工)などがあります。
これら方法は、型付けにかかる時間を大幅に短縮します。
しかし、湯もみ型付けに関しては個人でやる場合に他の型付けよりも失敗する可能性が高く、湯もみ型付けが合わない革というのも存在します。またスチーム型付けに関してもスチーマーが必要になってくる為、個人でやることは難しいです。
そこで、オススメするのがオーソドックスなオイルを使った"オイル型付け"です。
オイル型付けとは
"オイル型付け"はミット・グラブにオイルを浸透させて揉み、叩きを繰り返して型を付けます。ここでは湯もみ型付けなどと区別するためにオイル型付けと呼んでいます。手もみ型付けなんて呼ばれる方もいるかもしれません。グラブの型が付くのに時間がかかりますが、この方法が最もオーソドックスで失敗の少ない方法です。
通常のグラブオイルを使ってもいいのですが、型付け用オイルというものもあります。
新品の状態でボールが全く捕球できないほど硬いミットには、ミット・グラブを柔らかくする型付け専用のオイルがオススメです。オススメの型付けオイルに関しては以下の記事で紹介されています。
一方で、軟式用など新品の状態である程度柔らかいミットの場合は通常の保革オイル(固形オイル)で十分です。保革オイルであれば、ミットの型を付け終えた後も、普段のお手入れに使用することができます。
オススメはこちらのローリングスの保革オイルです。
型付けに使うオイルが決まったら、次はついに型付けに移ります。
オイル型付けの工程
オイル型付けの工程は大まかに分けると以下の5つになります。
1 紐調整
紐調整は型付け前の下準備の工程にあたります。購入したてのミットの紐は、ほとんどの場合、全て結ばれた状態です。まずはこの結び目を解きましょう。
というのも、オイルを革紐などを含めたミット全体に塗りたいので、塗りムラを出さない為に紐の結びを全て解きましょう。
2 オイルアップ
ミット全体にオイルを塗布します。スプレータイプの型付けオイルを使用する場合は、ミットを塗装するような感覚でまんべんなく塗りましょう。
塗りムラが出てしまいそうな場合や、細かいところは布に吹き付けて塗布しても問題ないです。
また、通常の保革オイル(固形)を使用する場合は布につけて全体に塗布しましょう。固形オイルの場合、冬場はオイルが固く塗りにくいのでドライヤーで
コツはミットの色が全体的に濃くなるくらい、革にオイルを擦り込むように塗りましょう。
重要なポイントとしては、グラブの平裏部分(グラブの手を入れるところ)にもオイルを塗ることです。
3 温風加熱
オイルを塗り終えたら、次は温風で加熱していきます。
布団乾燥機や食器乾燥機を使って加熱する方法もありますが、ドライヤーを使うのが手軽です。
ミットをグラブ袋などの袋に入れてドライヤーの送風口をグラブ袋に入れてグラブ袋の紐を締めたら温風でミットを温めましょう。
注意点としては送風口をミットに直接当てないこと、様子を見ながらやることです。
1〜2分程度、温めたらミットをグラブ袋から取り出してミットが冷めないうちに次の工程に移ります。
4 揉み
揉み・叩きの工程は本格的にミットに型を付ける工程になりますが、
ミットを揉みほぐして柔らかくする工程です。ミットが温まっている状態は柔らかくなりやすいので、冷める前に揉んでいきます。
以下の画像で線の引いてある部分が特にグラブを柔らかくする場所で、黄色い楕円の部分がボールを捕る部分(ポケット)になります。
自分が付けたい型をイメージしながら揉んでいくのですが、”シングルブレイク”、”ダブルブレイク”問わず重点的に揉む必要があるいのが、土手部分とウェブです。
土手はローリングと言って洗濯板で洋服を洗うような感じで土手を揉みほぐしていきます。
この土手部分を柔らかくすることで、ミットの開閉がしやすくなります。
ウェブも同じようにローリングで柔らかくしていきます。このウェブの柔軟性が無いとボールがうまくミットに収まりません。
揉みほぐしの工程では、短時間で柔らかくしようとせずに途中でミットをはめて、型をイメージしながら作業を行いましょう。
5 叩き
ある程度柔らかくなったら、次はグラブハンマーを使った”叩き”の工程に入ります。
人間の手は関節があることで自在に動かすことができますが、この”叩き”の工程はその関節を作る作業です。また、1つ前の工程である”揉み”は手相を付ける作業に当たります。
オススメのダブルブレイクの型を付ける場合、“叩き”の工程で親指の付け根と小指の付け根の2箇所に関節を付けます。とにかくこの2箇所に折り目をつけるようにひたすら叩きます。
ミットを閉じた時に画像ように二等辺三角形のような形になるのが理想です。
理想とする型に近づいてきたと思ったら、実際にボールを捕球してみましょう。
この際、トレーニングボールを使うと効果的です。トレーニングボールは重さがあるので、捕球を繰り返すことでポケットが形成されていきます。
型付けの工程は以上です。
納得のいくまで3〜5の工程を繰り返しましょう。注意点としては、この型付け作業で100%の型は付けず、7〜8割くらいの完成度に留めておきましょう。
残りの2割はキャッチボールやノックで慣らすのがオススメです。
最後に
型付けが終わったら、ついにグラブを実践投入していくワケですが、せっかく付けた型もメンテナンスを怠ると台無しになってしまいます。
以下に正しいメンテナンス方法が載っているので参考にしてみてください。